うそだ……。
なんで、こんなことになるんだ……。
息子の様子がおかしいというのは、前から気づいていた。
なのに、こうなるまで見て見ぬふりをしていた。
その結果が、これだ。
そもそも、こんなことになったのは、オレの家族の人生が台無しになったのは、そう、すべてはアイツのせいだ。
息子が学校に行かなくなったのはゴールデンウィーク明け直後だった。
5月8日。
コロナが第5類に移行した日。
この日を境に日本中のほとんど、少なくともオレの知っているすべての世界は元に戻っていった。
とはいえ、うちのパワハラ・バカ上司は会社の方針を一切無視して、在宅推奨もなんのその、もともと在宅を許すこともなく、そいつの奴隷として働いているオレへの変化といえば、コロナ禍がやわらいで、通勤ラッシュがさらに悪化したぐらいなもんだ。
できればコロナに感染して違う世界に旅立ってほしかったが、そういうヤツに限って、めっぽう病気に強い。
朝のリビングのテーブル。
そこはいつもと違った。
いつもこの時間、息子は家に出かけており、彼の食べた後の食器がおいてあるはずのテーブル。
それが、今日は手をつかずのままおいてある。
「あれ、今日はまだ出かけてないのか?」
食器を見てつぶやくオレに気が付いた妻。
「なんか調子悪いみたいなの」
その日、息子は妻に、
「なんだか体調が悪い」
と告げると、そのまま自分の部屋で布団をかぶってしまったそうだ。
そういえば、ネットニュースで、
「ゴールデンウィーク明けの不登校」
っていう記事を目にしたな。
なんか嫌な予感がしたが、どうせ他人の他所の話だと思って、荒れたコメント流し読みしていたっけ。
<休みが続いて、学校に行く気力になれない。そんな時、親は無理をさせてはいけない>
バカげている。
そんなんだったら、そもそも休みすら満足に取れないオレはどうなんだ?
テレビで時刻を告げられ、焦るオレ。
うちのバカ上司は朝が早い。
朝が早く、帰るのが遅い。
昭和の典型的なサラリーマンというのか。
当然、部下はそれを基準がなるので、うちの部署だけ、一同、朝が早い。
ラジオ体操するのでもなく、カブトムシを取りに行くでもなく、無意味に早起きして、出社して、思い思いネットで時間つぶしをしている。
そんなときに、目にしたのがさっきのネットニュースだった。
「まぁ、明日になったら普通に学校へいくだろう」
オレのその考えは、はっきり言って甘かった……。
※このドラマは、作者の体験を元にしたフィクションです。
■次回予告 「あさひなが丘の大統領」■
「そ、それでもアンタは担任なのか!」
「いえ、だからお父さんのおっしゃることは分かりますが、友達同士の遊びですから」
「遊びで、蹴ったり殴ったりするか!」
「その子も軽くツッコミを入れたっていうんですから、まぁ、そんなオオゴトにしなくても」
(不定期につづく)