キャリアコンサルタントの勉強をすることで、はじめて知った言葉が「社会人基礎力」。
ちょっと、気になって調べてみると、「人生100年時代を生き抜く力」が「社会人基礎力」ってことなんですが、ボクは、
社会人基礎力=新入社員に必要な力
だと思っていました。この誤解を払拭すべく、本から学ぼうと、こちらを選びました。
もともとは、「傾聴力」について学ぼうと思って本探しをしていたんですが、当然、それを含めた基礎力について書かれている本でした。
目次と概要
2019年11月10日に初版が、誠信書房から発行された本です。
この本の構成はこんな感じです。
目次
はじめに
第1章 社会人基礎力とは 【島田恭子】
第2章 「規律性」の巻:社会のルールや人との約束を守る力 【田中美和子】
先輩からのエール――廣島瑞穂
第3章 「課題発見力」の巻:現状を分析し目的や課題を明らかにする力 【島田恭子】
先輩からのエール――福留大士
第4章 「情況把握力」の巻:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力 【榊原圭子】
先輩からのエール――古市盛久
第5章 「計画力」の巻:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力 【田中美和子】
先輩からのエール――嶺田有希
第6章 「ストレスコントロール力」の巻:ストレスの発生源に対応する力 【黒田玲子】
先輩からのエール――嶺田有希
第7章 「創造力」の巻:新しい価値を生み出す力 【島田恭子】
先輩からのエール――山田雄介
第8章 「発信力」の巻:自分の意見をわかりやすく伝える力 【黒田玲子】
先輩からのエール――山田雄介
第9章 「傾聴力」の巻:相手の意見を丁寧に聴く力 【古宮 昇】
先輩からのエール――福田晴一
第10章 「実行力」の巻:目標を設定し確実に行動する力 【榊原圭子】
先輩からのエール――古市盛久
第11章 「柔軟性」の巻:意見の違いや立場の違いを理解する力 【黒田玲子】
先輩からのエール――廣島瑞穂
第12章 「働きかけ力」の巻:他人に働きかけ,巻き込む力 【榊原圭子】
先輩からのエール――福田晴一
第13章 「主体性」の巻:物事に進んで取り組む力 【古宮 昇】
先輩からのエール――福留大士
第14章 「社会人基礎力」確認ワークの巻:12の能力要素をセルフチェックしてみよう! 【鈴木篤司】
大学生向けでもあるようなので、14章と章立ては多いですが、イラストや図が多く、あっという間に読み終えることができました。
特に、第9章の「傾聴力」はさすがに学生にもわかるような言い回しなだけあって、理解しやすかったです。
社会人基礎力とは
経済産業省のホームページにもありますが、社会人基礎力は3つの能力と、12個の能力要素から構成されています。
ボクなりにまとめるとこんな感じです。
カテゴリ(1)前に踏み出す力 (アクション)
①主体性
②働きかけ力
③実行力
カテゴリ(2)考え抜く力 (シンキング)
④課題発見力
⑤計画力
⑥想像力
カテゴリ(3)チームで働く力(チームワーク)
⑦発信力
⑧傾聴力
⑨柔軟性
⑩状況把握力
⑪規律性
⑫ストレスコントロール力
この12個のうち、社会人を20年も経験しているボクでも身についていないのが2つありました。
それが、「⑧傾聴力」と「⑫ストレスコントロール力」の2つです。
⑫については、純粋に業務のストレスであれば例えばマインドフルネスとかビジネス書でも参考になるものがあるのですが、職場の人間関係とかパワハラとかについては……。
ボクは、この2つ以外については、働きながら身につけることができると思います。
もちろん、働く前に準備するに越したことはないとも思いますが、準備なくても、3年ぐらいである程度の力は備わってくるかと。
ただし、大きな注意点として、これから社会人になろうとする方はかなり苦労を伴って身につけることになることです。
20年ぐらい前は、企業にゆとりがあったので、「新人教育」として(⑫を除いて)会社が教えてくれました。しかし、いまは、そこまで余裕がないので、12個のうち、おそらく1個か2個ぐらいしか教えてくれないと感じています。
教えてくれないから、この本が必読の一冊になる
これから社会人になる方や、入社1、2年目の方は、この12個の社会人基礎力を身につけておいた方が良いです。
それは、働くと、周りの人がこの基礎力を身につけているからです。
じゃあ、どうやって身につけるかというと、やはり、こういった本でシミュレーションして、あとは、ひたすら実践するしかないと思います。
経済産業省のホームページにも情報があるのですが、
「社会人基礎力をこれから身につけたい」人にはちょっと難しいかな
と思います。
なにせ、この本の主人公は「基礎まなぶ君」という大学3年生が主人公。
さらに、ページが進むと、まなぶ君は社会人になっていくので、大学生や入社して数年の方にとっては、まなぶ君の経験や失敗は自分事としてとらえやすいと思います。
「傾聴力」の説明、バツグンに良かった
ちょっとなめていました。
この本を一通り読んだのですが、「傾聴力」の部分は、他を抜きんで、分かりやすかったです。
他の「傾聴力」の本も読んだのですが、やはり、テクニックが多く、それ以前の
傾聴は何のために必要なのか?
という原点回帰に立ち戻ることができました。
これは、たぶん、社会人経験が長いとついつい目をつぶってしまうことでもあるように思います。
ボクは、ハッと目が覚めました。
キャリアコンサルタント養成講座で、何度か、傾聴の練習をしていたのですが、この原点回帰こそがすべての基礎。ここから入らないと、いくら傾聴の練習をしても意味がないようにもすら思いました。
じゃあ、原点回帰ってなにかってことになりますよね。
傾聴力の奥義
出だしに「傾聴力」についてこう書かれています。
傾聴力とは、適切な反応や質問で、相手が話したくなる環境をつくりだし、言いたいことを引き出す力と心得よ!
P109
この本では、傾聴力について、P109~121のわずか10ページぐらいにまとめられていますが、この部分が付箋だらけになりました。
この本では、杓子定規な言い回しだけではなく、(この章を担当した)著者の本音ともいうべき記載がありました。
「相手を100パーセント無条件に受け入れる」というのは理想論であって、「すべての人のことをいつも完璧に理解し受け入れる」ということも、実際にはできません。
P111
はい、なんとなく感じていました。
しかし、キャリコンを目指しているのに、そんな気持ちになっていいのかと、自分の中で蓋をしていたことを、この本では代弁してもらったような。とても気持ちが楽になりました。
そして、このように続きます。
(中略)……その努力のなかで私たち自身も成長します。
P111
ここでは紹介しませんが、「中略」とした部分、これがこの著者が伝えたいことなんだと思います。ぜひ、お手に取って読んでみてください。
傾聴の基本
おそらく「基本中の基本」にあたるのだと思います。
ボクは、そこが抜けていたので、キャリアコンサルタント養成講座のロールプレイでは、「傾聴」をテクニックとして使っていただけだったように思い、ハッとしました。
私たしは人の話を聞くときでさえ、相手の言うことについて、「良い」か「悪いか」、「正しい」か「間違っているか」を、教えようとしてしまいがちです。
P111
……というか、ボクはほぼ100%そうしていました。
このページは、全部紹介したいぐらいで、部分的に切り取ると、かえって理解しにくいと思いますので、これぐらいにしておきますが、最終行のこの文章で、ボクは、ようやく、傾聴の本質を理解することができました。
私たちが本音を話すとき、それは正されたり、否定されたり、評価されたりしたくはありません。わかってほしいのです。
P111
また、これはキャリアコンサルタント養成講座の先生が話していたことでもあったのですが、
話し手の感情に飲み込まれてはダメ
ということが、P112に記載されています。その理由や具体例についても、同ページに記載があるのですが、こりゃもう、誰でも身に覚えがありそうなたとえで、すごく理解できました。
さらに、「うなづき」についても具体的にどのようにするのが良いかというのも書かれており(P113)、これについてはWeb会議では早速実践しましたが、効果テキメンでした。
「傾聴」の章の担当は古宮昇さんだった
最後まで読んでみて分かったのですが、「傾聴」の章を担当していたのは古宮昇さんという方でした。
この方、調べてみると、「傾聴」について多くの本を書かれている方でしたので、他の本を読んだらまたみなさんにお伝えしますね。