「傾聴」について、もう少し日常生活寄りというか、理解しやすいものがないかと探していました。
そんな中、「子ども・パートナー」という言葉がタイトルに入っていたものを発見!
カウンセリングの教科書上では、身内へはタブー視されていたはずなのに。
「なんで?」
っていう純粋な興味から、この本を手に取ったのですが、かなりの「あたり」でした。
目次と概要
2017年6月25日に初版が、秀和システムから発行された本です。
構成はこんな感じです。
目次
第1章 ただ「聴く」だけで関係は変わる
1 「息子の話を聴ける母親」になりたい
2 「家族に対してカウンセリングはできない」のが定説
3 「息子のために」は、実は「自分のため」
4 中学生になった息子の反乱
5 「聴く」チャンスを逃さないために準備したこと
6 わずか5分の「傾聴」が息子との関係を変えた
第2章 相手の気持ちに寄り添う「聴き方」の基本
1 話し手の秘密を守る
2 「話したい」と思わせる環境と関係をつくる
3 相手を主人公にして「聴く」
4 ジャッジやアドバイスをしない
5 相手を無条件に肯定する
6 「同感」せずに「共感」を持って聴く
7 興味本位の質問はしない
8 答えは相手の中にある
第3章 すぐ実践できる「聴く」ための技法
1 「徹底的に聴いている」ことを相手に伝える技術
2 うなずき、あいづちを打ちながら、相手の感情を拾う
3 事柄と感情は分けて聴く
4 話を要約し、まとめて言い返す
5 「要約」の練習をする
6 相手を認める、相手を褒める
7 質問するときには相手に心の準備をさせる
第4章 「聴く」ことのできる自分をつくる
1 カウンセリング三条件の一つ「自己一致」とは
2 「今、この瞬間の自分の感情」のつかみ方
3 自分を理解し、判断の基準を広げよう
4 自分の長所・短所を見つける
5 自分の思い込みに気づこう
6 主観から客観へ視点を変える
7 不安から自分を守る「防衛機制」を知っておこう
8 「たてまえ」と「偽の本音」と「本当の本音」
9 伝えるときは人を傷つけない「Iメッセージ」を使おう
10 自分の今の感情をつかむ?モヤモヤはどこから来る?
11 「心配の愛」ではなく「信頼の愛」を
12 相手にOKを出せたら、自分にもOKを出そう
第5章 「聴く」という愛でつながろう
1 信じることから始めよう
2 「傾聴を学ぶこと」の本当の意味
3 聴くために自分を変える必要はない
4 聴く側も自分の声を聴くことができる
5 肉親の話を聴けなかった経験から得たもの
6 ただ聴いてくれる存在の大切さ
あとがき 1
「聴ける自分をつくる」とは、自分を愛し、大切にすること
あとがき 2
「抱っこしてくだしゃ~い(号泣)」
おねがいですぅ~。おかぁ~しゃぁ~ん。
さすが秀和システム。
他の本も読んだことがありますが、ホームページに掲載されている目次情報に抜かりがありません。
実践型「傾聴」
著者ご自身がかなり苦労して、また、多くの失敗を通して、この本にある「傾聴」にたどり着いています。
ボクはこういった実践型「傾聴」の本は、みたことがありませんでした。
本の中にもありますが、「家族に傾聴をするのはタブー」だとしても、それをやってみないと分からないことも多くあります。
昔、NHKであった「プロジェクトX」が好きだった方は、この本に共感できると思います。
そうそう、「共感」といえば、この本では「同感」との違いについても分かりやすく記載がありました。
傾聴で必要なのは「共感」であって、「同感」ではありません。
ロジャーズの「カウンセリング三要素」にも「共感」は出てきますが、「同感」は出てきませんし。
ちなみに、ロジャーズの「カンセリング三要素」についてもこの本では解説があります。
ボクは、この本を読むまでは、三つの要素がそれぞれ独立したものだと思っていました。
しかし、著者の説明を読むと、一つの共通点があることに気が付きます。
これについては、P148に記載がありますので、ロジャーズの三要素について、いまいち分からないなぁと感じている方はぜひ、ご自身で確認してみてください。
強烈に印象的だった一文をあげると……
この本で1つだけ感銘を受けた文章をあげるとしたら、こちらです。
……傾聴とは「相手を主人公として聴く」聴き方です。
P45
あ、そういうこと?
っていうぐらい、ようやく理解できました。
一言でいうと、そういうことだったんですね。
キャリアコンサルタント養成講座では、傾聴というと、知識や技法についてしっかりと学んでからロールプレイになるので、なかなか把握できませんでした。
「うなづき」とか「オウム返し」とか「要約」とか。
それぞれのことについて学ぶと、それぞれを「使わないといけない」という気持ちになります。
だから、トータルで「傾聴」ってなんだか分からなくなってしまうんだと思います。ボクはそうでした。
この本では、そういうアプローチではなく、むしろ逆。
結果として、それを「うなづき」や「オウム返し」や「要約」と読むっていう感じでの理解となります。
それだと、受験対策にならないのも重々承知ですが、でも、キャリアコンサルタントとして実務を考えるのであれば、一旦、受験という観点はとっぱらって一から「傾聴」に向き合うというのも良いんじゃないかと感じました。
では、ここでクエスチョンです
ドクター・森永は脳外科医。緊急搬送された親子二人のうち、父親は即死。子供は重体だがオペ室に運ばれているとのこと。オペ室に入り、森永は驚いた。その子供は森永の子供だったのだ。
さて、ここで問題です。子供とドクターの関係は?
この答えはP113にあります。
P112のタイトルを読むと、改めて驚くのですが、ボクが求めていた本、日常生活寄りな本っていうのは、つまりはこういうことなんです。
とある事例とかじゃなく、もっと生活感があるというか、そうじゃないと、やっぱり理解はできないんです。
この本で出てくる例えは、こういった身近なものだったり、考えさせることが散りばめられた状態で、なおかつ、著者の体験したことも多くあります。
専門書やビジネス書を読むのも良いのですが、こういったエッセイ調な感じの本で得た知識は心に染み入ります。
キャリアコンサルタント養成学校に通いながら、いろんなことを学んでいます。
ロジャーズについては、非常にシンプルな理論ですが、奥が深い思っていました。
しかし、それを日常生活レベルまで落とし込むことが、ボクはこの本のおかげでようやくできたと感じています。