キャリアコンサルタントの支援領域はさまざまです。
今回はいわば大御所ともいえる「中高年齢者」の支援領域。
ちなみに、複数ある支援領域のうち、2つを学習しました。
いずれも厚生労働省の研修資料で、今回も同じ資料からの学習です。
さて、中高年齢の領域は自分自身がその層に当てはまることもあり、キャリアの再構築を一人で独力でやってきた、そういった体現してやってきたことの棚卸にもなり、とても勉強になりつつ、復習にもなりました。
ちょっと無理がある「中高年齢層」のくくり
資料では、40歳以上を「中高年齢」という定義づけがありました。
しかし、ひとくくりで「中高年齢」とまとめていますが、この世代は
・バブル期
・就職氷河期
が混じっているので、
・逃げ切り希望おじさん
・逃げ切り絶望おじさん
みたいな感じで分けてもらった方が、その層にいるボク自身はありがたいです。
ボクは就職氷河期層に位置するので、バブル期の人とは一緒にしてもらいたくないなぁーなんて思いながら、資料を読んでいました。
バブル期vs氷河期の対立構造
特に資料には記載がありませんでしたが、勉強していると、バブル期と氷河期での対立構造というのをふと感じました。
バブル期の人が全員そうだとはいえないのですが、多くは、逃げ切りをかなり意識しているにも関わらず、変に役職が付いており、いわば好き放題にしている尻ぬぐいを、次の氷河期世代がしないといけないっていうのは、なんとも切ないですね。
いわば、昭和・平成の尻拭いをする世代が段階の世代ジュニアであり、氷河期の世代でもあるのですが、この世代は、まじめでして、逃げ出すことを知らない世代でもあります。
心と体を壊すことなく、乗り切っていってほしいです。
ちなみに、ボクはと言うと、とっくにサラリーマン人生が崩壊しているので、それを蚊帳の外で見ているような感じでもありますから、余計、客観的に見ることができるのかもしれませんね。
あらら、なんかちょっとテーマから遠ざかってしまいました。
元に戻しましょう。
具体的な事例での検証
ちょっと驚いたのが、具体的な3つの事例が紹介されていました。
・介護で悩んでいる50代
・キャリアに悩む40代
・定年で悩む60代
あるあるというか、そういう人って多いよねっていう事例が具体的に逐語録として掲載されていました。
一般論ではなく、具体的な悩み相談を見ることができるのは、キャリコンの実務経験が少ない……というか、ほとんどないボクにとってはとっても貴重な情報でした。
セルフキャリアドックのお出まし
具体的な方法論となると、やはり「セルフキャリアドック」のお出ましです。
40歳以上の中高年齢者には、人間ドックの受診者がほとんどですから、そこに「セルフキャリアドック」、悪くないと思います。
ただ、「40歳以上」という、十把一絡げな状態であることも事実。
また、この世代は、同じ業界で同じ規模の企業で同じ職、役職、年齢だとしても、共通性はかなり乏しいと思います。
もし、共通のスキルがあるのであれば、転職も活性化しているはずです。
なので、かなりばらつきがあるということになるのですが、これは考えようによってはいいことでもあると感じています。
個性的で個人差にばらつきが良い方向であるのであれば、それを伸ばしたりアピールすることができます。
ただ、個人ではそれを測り知ることができないので、そこにはキャリアコンサルタントの必要性があると思いました。
そう考えると、「セルフキャリアドック」といった人間ドックのような共通の検査という形よりも、なんか、他の方が良い気がします。
ただ、セルフキャリアドックを否定するのではなく、それはそれで熟知したキャリアコンサルタントが、どのように個人に合わせて進めていくかという感じでして。
「いま、ここ」の視点
そういうことで、ボク自身がキャリア再構築をした時のことを少し紹介しようと思うのですが、その前に。
今回の教材にあったように、次の理論は必須な知識は、キャリアの再構築をする上で、当事者(キャリアコンサルタントではなくクライエント)が理解しているのが望ましいと思います。
ボクは知識ゼロで独力で再構築をしていましたが、早い段階で次の理論を知っていれば、もっと楽ができたような気にもなりつつ、自分が特殊ではなく、その世代特有の悩みや苦労だということを知ると心が落ち着きましたので。
キャリア再構築の途中で、キャリアコンサルタント養成講座を受講して、そこで次に紹介する理論を学ぶのですが、泣きそうになるぐらい腑に落ちましたし、全世界で年齢的に共通する(共通した)悩みなんだと知ることはとても救いになりましたもん。
ということで、お待たせしました。
参考になった理論は次の通りです。
1.ライフシフト(人生100年時代のマルチステージ人生)
リンダ・グラットンさんの「ライフシフト」ですので、有名ですね。
かつては
3ステージモデル
(教育→仕事→引退)
でした。そう、「今までは」ではなく「かつて」なんですよ。
それが、
マルチステージのモデル
(教育→【ここにいろいろ発生】→引退)
となります。【ここにいろいろ発生】とありますが、探検、就職、パラレルキャリア、ポートフォリオとか、最近聞くものがどんじゃか入るわけです。プロティアンキャリアとかも入るんじゃないかな。
2.発達段階の理論
これはキャリアコンサルタント養成講座で習う理論ですが、本やネットで理解するより対面で説明してもらうと理解がバツグンに進みます。
・スーパーのライフキャリアレインボー
・エリクソンの発達8段階説(特に成人期)
・レビンソンの発達段階(特に中年期)
・岡本祐子の「アイデンティティのらせん式発達モデル」
岡本さんの理論は、この教材でじっくり学んだのですがコロナ禍のいまならより理解しやすい考え方だと思います。
3.転機の理論
「ブリッジズのトランジションモデル」は、キャリコン養成講座で習った、理解しやすい考え方です。
「終わりははじまり」っていうやつですが、ボクは、この教材の中ではこの部分にとても共感しました。
(1)人生で、今まさに手放すべきものはなにか。
新しいスタートを切るためには、「今まさに手放すべきもの」を実際に手放していくという「終わり」から始めなければならない。(2)人生の舞台袖で出番を待っている者は何か。
ウィリアム・ブリッジズ・著「トランジション–人生の転機を活かすために」
堪えは、外的な出来事や状況から明らかになることもあるが、本質的には、心の内にあるもの、主観的なものである。
これは、トランジションに直面している時に自分自身に問いかけるをするということですが、キャリアを再構築の当時のボクにとっては、自問自答する際の1つの指針となりました。
さらに、これは受験勉強で有名中の有名な「シュロスバーグの4S」について。
Situation
Self
Support
Strategy
の4つ。
キャリコンの実技試験で、この4つを指針として考えるように言った有資格者の方がいましたが、これを受験生が用いるのはちょっと難しいように思います。
事実、ボク自身、キャリアの再構築中にこの4Sについて学びましたが、活用することはできませんでした。
キャリコンのように第三者的な見解であれば、理解しやすいかもしれませんが、当事者にはそれを受け入れることはちょっと難しいように思います。
この4Sでアドバイスをいただくことがありましたが、キャリコンの方は理解できても、クライエントのボクはそれを受け入れることはできませんでした。
なので、キャリコンが4Sに当てはめるのは容易な一方、それをクライエントに理解してもらうこと、受け入れてもらうことは非常に困難だといまでも思っていたりします。
会社員だから納得のシャインの理論
であれば、「シャインのキャリア発達段階」の方がボクはしっくりきました。
特にサラリーマン事情での悩みということもあって、シャインの発達段階とキャリアアンカーについては、簡易テスト結果も比較的受け入れやすく、そのあとのキャリアサバイバルまで一貫して理解しやすかったです。
ただ、これはサラリーマンだからというようにも感じており、主婦やアルバイトもしくは、定年後の方には逆に抵抗があるかもしれませんね。
クランボルツは偶然か必然での考え方で差
そういう意味だと、「クランボルツのプランドハップンスタンス理論」は万人受けするかもしれません。
しかし、事象や出来事を「偶然によるもの」と考えることができるかで、これまた理解する姿勢に大きな差が出てくるようにも思います。
「偶然も必然」という考え方、ありますし。
新しめのサビカスの理論はコロナ禍で過去のもの?
受験知識上では、かなり無双っぽい理論として「サビカス」のキャリ構築理論として、「職業的パーソナリティ」「キャリア適合性」「ライフテーマ」の3つは受験知識としても有名ですね。
今回の資料でも「極めて実践を意識した理論」という表記がありましたが、コロナ禍により、もしかしたら、アフターコロナにおいては、そのままではもう通用しなくなってしまったように、ボクは感じています。
サビカス自身が30年以上の実践経験をまとめたものの中には当然、コロナ禍によるここ数年の経験は含まれていませんから、コロナ前は万能な無双ツールだったように思いますが、これをこのまま使ったキャリコンは難しいかも。
日本人に理解しやすい理論
今回の資料を読んで、しっくり来たのが2つあります。
キャリア・プラトー
ボクと同じ世代、団塊の世代ジュニアが嫌と言うほど味わっている「昇進の停滞」ですね。
昇進をニンジン(餌)としてぶら下げてこき使うことができない時代に入った日本ですから、それに対しての研修も日本で進んでいるようです。(ちなみに、昇進をエサにしてこき使うのも中高年齢層であれば、使われる方も中高年齢層だったりするんでしょうけど。)
山本寛(青山学院大学経営学部)さんが研修しており、ホームページで「キャリアプラトー」についてまとめてあって、とても分かりやすかったです。
サクセスフル・エイジング
日本語では「いきがい」に近い意味のようです。
キャリア・プラトーで仕事にやりがいやいきがいを求めてきた人は、じゃあ、今後どうすりゃいいの?っていう観点では「サクセスフル・エイジング」、つまり、「いきがい」を改めて再定義する必要があるのかなと思いながら学びました。
かつては「定年近くなったら」考えることですが、いまや、それは40歳以上の中高年齢だけではなく、20歳でも学生でも考えていくことなのかもしれません。
中高年齢は組織との折り合いが難しい
いつかはそんな時代が来るだろうと思っていたことがコロナで、一気に自分ごととなり、現実となってしまったのですが、「中高年の扱い」です。
40歳以上は、きっと、そんな感じではないでしょうか?
コロナ禍により、組織もかなり疲弊していると思います。
組織の疲弊は経営者の疲弊で、それは普通は数年で従業員や現場にじわじわとくるものでした。
「あれ、うちの会社、なんかヤバくね?」
みたいな感じで、勘づいた人からすこーしずつ少しずつ転職したりして逃げて行ったのが、もはや、一気に危険の波はやってきます。
それなのに、リストラを含めて、なにかとターゲットにされている中高年齢層は、組織から冷遇されている傾向が高く、なかなか組織との折り合いが難しい層なのかなぁと勉強していて感じました。
だからこそ、中高年齢層へのキャリア支援は急がないければいけないようにも感じました。