「傾聴」については、本をたくさん読んだので、ある程度の理解ができました。
となると、次に必要な知識は「どの場面でどのように使うか」ってこと。
これが知りたくで、古宮昇さんシリーズでこんな本を読みました。
ちなみに、いままで紹介した古宮さんの本はこちらです。
目次と概要
ナツメ社より2015年7月30日に初版が出版されました。
この出版元のナツメ社の本を読むのは初めてだったと思いますが、ホームページをみてビックリしました。
目次情報がものすごく詳細なんですもん。
目次
第1章 求められる傾聴力とは
■傾聴は、人と人とをつなぐコミュニケーション
コミュニケーションは心の距離を近づける
コミュニケーションの二つの役割
■相手の話を受け止めると、共有世界が築かれる
情報は発信するよりキャッチする
価値観を肯定されると、承認欲求が満たされる
■人は好意を受けたら返そうとする
心は自動的に反応する
返報性が信頼関係を生む
■プロの技もそのままでは使えない
心理カウンセラーは傾聴の専門家
話を聴く目的が異なる
■傾聴が多くの問題を解決する
問題解決へのさまざまな道
一般的な傾聴の目的は、ニーズの見立て
■役割認識が人間関係をかたちづくる
自己開示がコミュニケーションを支える
行為は役割認識によって方向づけられる
■心理カウンセリングは非日常の空間で行われる
シチュエーションが異なる
時間を区切るときは配慮が求められる
■チームで問題を解決する
個人の能力よりも組織力
チームワークに必要な力
■相手が求めている自分の役割に意識を向ける
注意を向けなければ、情報は受け取れない
求められていることを意識する
■人の本質を知れば話の聴き方も変わる
人には長所もあれば短所もある
同じ人間はどこにもいない
■人の心は移り変わる
心はとらえどころがない
心も成長・発達する
■人間力を養う
人間理解は傾聴の基礎知識
話を聴いてもらいたい人になる
■人間力は総合力
人間力はさまざまな場面で力を発揮する
人間関係はふだんの生活の中でつくられる
■知識があれば理解力が深まる
知識はもてる力を強化する
専門性を高めることが傾聴力を強化する
■想像力が傾聴力を向上させる
経験のすき間を想像力が埋める
思考を巡らせば、想像力が広がる
■想像力を鍛える
いろいろな立場に自分を置き換えてみる
自分への問いかけが決め手
■多くの場面で傾聴は効力を発揮する
傾聴から広がる世界
場面別アプローチで豊かな想像力を
■心を読み解くヒント 動機づけ
第2章 心理カウンセリングから学ぶ傾聴の基本
■おおらかな気分で耳を傾ける
大きな心で話を聴く
安らぎの場を提供する
■あるがままに受け止める
人は最もよい行動を選び取る
性格や価値観は必要から生まれる
■相手の世界観に共感する
話し手を世界の中心に置く
客観的事実よりも大切な主観的世界
■共感するのは難しい
行動の背景因子は相互に作用する
変化もあるがままに受け止める
事実と評価は混じりやすい
■言葉より伝わるしぐさや態度
話しやすい雰囲気は人がつくる
言語を使わずに伝える
■言葉にならない声を聴く
ノンバーバルで受け取るメッセージ
気持ちは服装にもあらわれる
言葉にできないさまざまな思い
■相手の懐に入り込む
相手の気分を読み取る
相手の性格に合わせた応答をする
■話をさえぎらない
おしゃべりは楽しい
話したい欲求を抑えなければ、話は聴けない
■話を聴いていることを、相手に伝える
受け取った球を返す
相づちが話を深める
■キーワードを繰り返して、さらに話を深める
キーワードを探す
「わかる」は禁句
■批判しない
気持ちは対極にすり替わる
価値観は絶対的なものではない
■非難されても受け止める
自他の区別をつける
反論はしない
■他者への非難に共感する
非難の対象者を擁護してはいけない
悪口を肯定しても受容にはならない
■噓をつかない
自分の感情を抑えつけてはいけない
否定的な気持ちになるわけ
自分の感情を受け止めながら聴く
■思いを察していいかえる
話し手の思いを言語化する
理解にズレが生じたら
明確化は自己理解を深める
■話を引き出す
質問を使って話を聴く
二種類の質問を使いこなす
■上手に聴き出す
具体例をあげて尋ねる
閉ざされた質問に置き換える
■話し手の意図に合った質問をする
最初のひと言では意図はつかめない
質問は話の舵取り役
■情報を集めようとしない
話の内容に沿った質問をする
好奇心で質問しない
■論理性を求めない
感情は論理的なものではない
無理に筋の通る話にしない
■情報提供で解決する問題もある
提供する情報を選ぶ
確かな情報を提供する
情報提供の一環として
■アドバイスをする
アドバイスを押しつけない
信頼関係がないと反発を生む
アドバイスの危険な罠
■できないアドバイスもある
情報提供では解決しない問題も多い
答えを求めていない質問もある
■その人の力をほめる
ほめられると前向きになる
心を健康に保つ
■答えは一つではない
言葉の裏側にある心に気づく
答えを一緒に考える
■責任を引き受けない
社会規範が手助けをさせる
個人の課題を他人は肩代わりできない
自己決定に基づいた行動を支える
■心を読み解くヒント パーソナリティの形成
第3章 傾聴場面にあらわれやすい心理
■ホンネを隠す防衛機制
傷つきたくないという本能の働き
無意識に追いやる「抑圧」
■つらい現実を回避しようとする
現実から逃げる防衛機制
現実を否定する防衛機制
未熟な発達段階に戻る防衛機制
■都合の悪いことは置き換えようとする
言い訳し、正当化する防衛機制
かわりのもので充足を得る防衛機制
知識でカバーしようとする防衛機制
■置き換えた欲求で高みを目指す
かわりの行動で補おうとする防衛機制
社会的価値の高い欲求にかえる防衛機制
■他者と自分を重ねて心を安定させる
他者の行動を取り入れる防衛機制
自分の感情を相手に重ねる防衛機制
■気まずい雰囲気が続くとき
表面化されない抵抗もある
理由を探って関係をつくりなおす
■過去に生じた感情が転移する
以前抱いた感情が向けられる
マイナスの感情転移は抵抗と感じられる
■転移した感情にふりまわされる逆転移
転移に気づかず起こる逆転移
解決していない問題が逆転移を生む
■情報は無意識にゆがめられる
世界に一つの認知フィルター
柔軟な心で受け止める
物事をゆがめる認知フィルター
■くらべた対象で評価が変わる対比効果
認知の仕方にはクセがある
比較価値は本当の価値ではない
■好みが価値を左右する
目立った特徴が真実をゆがめるハロー効果
自信のなさが評価をあげる寛大効果
■ある一面が全体評価に結びつく
わずかな経験で認知する過度の一般化
単純にして理解する過度の単純化
■欠点を際立たせるレッテル貼り
人はレッテルを貼りたがる
不安な心がレッテルを貼らせる
■強迫観念に駆られるすべき思考
すべき思考はやる気を奪う
自分のものさしは他者には通用しない
■受容を妨げる劣等感
強い劣等感は問題を引き起こす
劣等感から生まれる引き下げの心理
■過度の甘えは依存を生む
社会が甘えを許容する
甘えは悪いことではない
互いに依存し合う関係とは
■メサイア・コンプレックスという落とし穴
自分が救われたいから人を助ける
自己中心的な動機による行いは不安定
■対人援助職へと導く不健全な動機
動機は仕事の質に影響する
感情を処理するための動機
不健全な動機に気づき修正する
■仕事として感情を管理する
対人援助職は感情労働
感情規則に則して感情を管理する
人としての感情を押し殺す
■感情労働は心を消費する
対人援助職に多いバーンアウト
共感疲労にはサポートが必要
■ストレスを理解しよう
ストレスは毒にも薬にもなる
人間関係はストレスのもとになりやすい
■ストレスとうまくつきあう
ふだんの生活の中でストレスを解消する
職場でストレスを解消する
■専門家に橋渡しをしたほうがいいとき
誰が対応するのがよいか適切に判断する
未解決の問題を抱えたまま支援はできない
■心を読み解くヒント 他者からの影響
第4章 知っておきたい場面別アプローチ
○「あなたのせいだ」と責める人への対応
○いつも誰かの意見を求める人への対応
○ホンネをしゃべれない人への対応
○攻撃的な言葉を発する人への対応
○白黒をはっきりつけたがる人への対応
○同じ話を繰り返す高齢者への対応
○体の痛みを訴える人への対応
○うつ状態の人への対応
○適応障害のある人への対応
○アルコール依存者への対応
○治療を受けたがらない人への対応
○なかなか退院したがらない入院患者への対応
○眠れないと訴える人への対応
○甘えが強い人への対応
○サービスを拒む人への対応
○子育てに自信をなくした親への対応
○クレームを言う保護者への対応
○子どもを虐待する保護者への対応
○万引きを繰り返す子どもへの対応
○キレる子どもへの対応
○いじめにあっている子どもへの対応
○陰口を言う子どもへの対応
○学校へ行きたがらない子どもへの対応
○ひきこもりの人への対応
○無気力な子どもへの対応
○有機溶剤を乱用する青少年への対応
○摂食障害のある人への対応
○強迫性障害のある人への対応
○認知症高齢者への対応
○認知症のある人の恋愛相談への対応
○好きと打ち明けられたときの対応
○ターミナル期を迎えた人への対応
一か所、上で黄色で文字をハイライト表示しましたが、ホームページで、もともと誤植だったので、そのまま引用しました。
場面別がリアルすぎ
この本ですが、場面別が簡単に整理されているだけではなく、ものすごくリアルでした。
しかも、実務でありそうなシチュエーションだし。
例えばですが、P214では
話してから「好き」と打ち明けられたときの対応
っていうのがあります。
どうしてそういうことになるかはP214に記載があるのですが、これって、本当にありそうです。
で、大切なのは、もし、瞬間的にそういう状況になったとき、どうすればいいかを知っておくこと。
これ、知っているか知らないかで、ぜんぜん対応が異なります。
好意の返報性(これはP20に詳しく書いてあります)
にどのように対応するかっていうことなんですが、とても勉強になりました。
キャリアコンサルタント試験の理論についてもイラスト入りで
例えば、
・マズローの欲求5段階説(P19)
・心の構造(P21)
といったところからスタートして、キャリアコンサルタントの学科試験の基本的な内容がイラスト入りで説明があります。
そういったところから、説明をしている本でして、それはつまり、この本の根拠となる部分でして、ボクは説得力を感じました。
強烈に印象的だった一文をあげると……
この本で1つだけ感銘を受けた文章をあげるとしたら、こちらです。
不登校の傾向がみられたら、様子をみるのではなく、早期に適切な対応をとる
P198
後々は、教育分野でもキャリコンとして活動できたらなって思っていましたので、こういうアプローチは以外でした。
具体的なことP199に書いてあり、もちろん、上の理由もきちんと説明があります。
いま、子育てとか、学校関係でお仕事をしている方は、このP198とP199だけでも目を通しておいた方がいいと思います。
では、ここでクエスチョンです
他者への批判を肯定するとどういうことになっていまうか分かりますか?
これはP76に答えが書いてあります。
他と同じで、あるあるネタというか、やっぱり相談者が悪口を口にするっていうことはあると思うんです。
それに対してどのように対応するか、もし、間違った対応をするとどうなるか、そういったことが記載されているページがP76なんですが、
これは、知らないと怖い
といった感想をボクは持ちました。
既に、この本を読み終えたので、
これを知っておいてよかった
と、いまはホッとしていますが。