マジメ、まじめ、真面目。
これって、結構悪いイメージがありません?
「マジメな人ほど、損をする」
とか。
日本人は真面目な性格が多いと言われており、今回ご紹介する本は、それを1冊みっちりと解説しているものとなります。
キーワードは「過剰適応」。
1年がかりでじっくり読んだ本です。
著者の廣川進さんは、以前、ブログでちょっと紹介したことがあるのですが、動画で拝見しただけにもかかわらず、すっかりファンになちゃっいました。
そう、3強の「國分、廣川、宮城」の一人なんです。
自己診断テストもあったりして、年末年始にじっくりと読むにはドンピシャです。
目次と概要
こちらの本はディスカヴァー・トゥエンティワンより2021年7月20日に初版が出版されました。
コロナ禍真っ只中に発売された本でして、アフターコロナと言われつつ現在でも色褪せないです。
ディスカヴァー・トゥエンティワンさんの本を紹介するのは今回初めてです。
手にして分かったのですが、この本は廣川さんだけではなく、他の方も共著となっていました。
そんな廣川さんですが、出版社の著者紹介にはこのように記載があります。
法政大学キャリアデザイン学部教授。公認心理師、臨床心理士、シニア産業カウンセラー、日本キャリア・カウンセリング学会会長。
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2765-4
もうちょっとちゃんと著者紹介してあげた方がいいのになぁと思いつつ、目次はめっちゃすごい。
はじめに
「過剰適応傾向」自己診断テスト
第1章 過剰適応とは何だろう?
「適応」が行き過ぎてしまうと
過剰適応が起こる心理的なメカニズム
第2章 過剰適応の原因となるもの
1 親子関係
2 機能不全家族
3 学校
4 発達障害
5 「見捨てられ不安」
6 社会と経済の不安
7 日本人の心性
第3章 過剰適応の状態を整理する
第1段階 過剰適応の状況を整理する
第2段階 過剰適応を捉え直すエクササイズ
第4章 自分をケアする
第3段階 自分をケアするエクササイズ
第5章 過剰適応に働きかける
第4段階 過剰適応に働きかけるエクササイズ
第6章 過剰適応のさまざまなケース
事例1 評価を落とすまいとしての過剰適応
事例2 役割を果たそうとしての過剰適応
第7章 過剰適応の人にどう関わるか
1 部下が過剰適応だったら
2 家族が過剰適応だったら
3 「自分らしさ」「本当の自分」を疑ってみよう
4 職場での配置とキャリア教育で過剰適応を防ぐ
第8章 過剰適応から体調を崩してしまったら
病名にとらわれすぎないでください
1 抑うつ症状
2 心身症
3 燃え尽き症候群(バーンアウト)
4 パニック症
これ、即買いしちゃうでしょ。
そもそも、目次から本文に興味を持たせる誘導技というか、この本の編集の人、すげーなぁ。
強烈に印象的だった一文をあげると……
この本で1つだけ感銘を受けた文章をあげるとしたら、こちらです。
「働き方改革」を主体的に取り入れるのではなく、受け身的に取り組むことで、「働かされ改革」になることが危惧されています。
P55
ここ以外にも第2章は必読です。
廣川さんが担当しているのは1章、2章、7章なので、まず、そこから読んでいくといいかも。
2019年の「働き方元年」。
その直後、コロナ禍に突入しちゃって、多くの労働者が「過剰適応」せざるを得ない状況になり、コロナ禍が故に労働者へのケアも満足にできないまま、さらに、テレワークが加速的に進んでしまう。
そして、「ワークライフバランスの崩壊」へ。
廣川さんは優しい言い方をされていますが、このP55には、ワークライフバランスが崩壊、そして、死語になる理由が明確に書かれていました。
これ、重要です。
キャリアコンサルタントとしては、必須な情報です。
というのは、クライエントが、「ワークライフバランスで悩んでいる」と言ったのであれば、それは、従来の「ワークライフバランス」ではないからです。
実は、コロナ禍の渦中の2021年から現在において、「ワークライフバランスの崩壊」については多くの方が言及しています。
その中で一番分かりやすかったのが、廣川さんのP55の「仕事場」への着眼点でした。
アルバイトの人はピンとこないかもしれませんが、サラリーマンだったり、専業主婦の方は、
「そうか、それでかぁ」
とすんなりに納得するでしょう。
あ、ちなみに「過剰適応」が全て悪いっていうことではなく、プラスの面もこの本ではきちんと書かれています。(第3章と、分かりやすいのはP231あたりに書かれています。)
では、ここでクエスチョンです
学校でのいじめ。その背景にある3つは、「過剰適応」「承認不安」ともう一つはなに?
答えはP42にあります。
学校だけじゃなく、職場の不適応とか、あるいは、アフターコロナに位置する現在の労働者を理解するにおいて、この3つは押さえておきたい。
というか人事担当をされている人は、この3つが作用していることを理解していないのであれば、相談を受けない方がいいようにも感じた、強烈なものでした。
ついでに、労働者の発達障害については、P43に書かれているので、これも、人事担当をしているなら、知っておきたい内容だと思います。
別に、理解しなくていいんです。
ただ、これを一度でも知ったか知らないかで、その人の上司や産業医との橋渡しとしては大きな違いがあるんじゃないかなぁ。
逆に、「両立支援コーディネーター」ではもうちょっと広範囲に体系的に詳しく学ぶので、その資格を持っている人は、こういったケースでの応用を利かす意味でも熟読しておくといいと思います。
それにしても、廣川さん、スゲーなぁ。
廣川さんが担当していない章との落差がちょっと激しくて、コストパフォーマンスとして判断が難しいんだけど、でもおすすめですよ。
最後に、「過剰適応」はなくすべきものではないので、そこだけ、ご注意を。